******
「セシルよ、何かあったのか」
帰宅するなりくすくすと笑っているセシルに、ゴルベーザが問う。
「ああごめん兄さん、ただいま。うん、ちょっとね」
ふふふ、と笑みを零し続ける弟は見るからに上機嫌だった。
着ていたジャケットを椅子にかけ、郵便物の束をテーブルに置いて。
セシルは束の一番上からハガキを一枚だけ取ると、携帯電話を取り出した。
しばしの沈黙のあと、もしもし、と電話からかすかに漏れ聞こえる声。
ジャケットもハンガーにかけず、ネクタイもゆるめないで。
帰宅するなり真っ先に電話をかける弟は珍しく落ち着きがなかったが、その表情が本当にうれしそうだったので、ゴルベーザは苦笑しながらもどこか微笑ましい心境で見守っていた。
「あ、もしもしクラウド?ハガキ届いたよありがとう。」
セシルはそれまで以上に笑みを深くして、電話に向かって話しはじめた。
「でも、これってさ」
ハガキをぺらりとめくり、今も変わらない二人並んだ笑顔を見る。
「『引っ越しました』じゃなくて、『結婚しました』でしょ?」
がちゃん、と受話器越しに派手な音がして。
あのポーカーフェイスの彼が携帯電話を取り落とす様子がありありと目に浮かんで、セシルは盛大に噴出した。
******
和装も洋装も結婚式はとてもおいしいのですが、
式とか何にもしなくて、ある日突然親しい人達にこんな感じに絵ハガキ一枚送ってすませちゃう
みたいなイメージが実はクラバツにはあります。
あっさりマイペース、でも二人なりにとても幸せ。そんな二人なんじゃないかな!みたいな。
ちなみにこの後きっとセシルはすっごい気合入れた結婚祝いを送ってくるんじゃないかなと思います。笑
PR