というわけで、スコールお誕生日祝い小話です。
といっても実質主役はレオンです。
…………ドロドロホームドラマ設定です。(詳細設定・注意事項は7月18日の記事「ドロドロホームドラマ」にありますのでそちらをご覧下さい)
まあスコールのことはねぎさんと合同開催したお誕生日エチャでお祝いしましたしね!良いかなと!笑
いや、一応小話の方でもスコール出てくるしお誕生日祝ってますが。扱いとしては明らかにレオン>スコールですので……。うん、ごめんねスコール。
現代パロでにょたバツでレオン・バッツ・スコールが兄弟という設定で、レオバツとかスコバツを妄想しているシリーズです。
そんな癖の強すぎる色物妄想ですので、大丈夫な方だけ続きからどうぞ。
ちなみにちょっと昔の話。レオン17歳・バッツ12歳・スコール9歳です。
レオン→バッツです。
【スイートホーム】
「まるで花が咲くように」
レオンとスコールは、同じ誕生日だ。
8月23日。
レオンは弟が生まれた日の事を良く覚えている。
前夜から産気付いて入院した母親と、それに付き添った父親。レオンはまだ三つだったバッツと共に留守番をしていた。
寝かしつけた幼い妹の横に転がって、眠れないままに夜を明かしていた。
家族が一人増えるという一大事への緊張と興奮で目は冴え切っていたのだ。
窓の外を見ると、紺色の空はその端がほんのり橙に色づき始めたところで、結局寝られなかったなと思う。
そういえば、自分の誕生日になったのだと、ふと気付いたのはその時だった。
不意にがちゃりと玄関で鍵の外れる音がして、レオンは身じろいだ。
父親だろうか。
確かめようと起き上がろうとして、服の裾を掴まれている事を思い出す。
シャツの端をにぎりしめる小さな手をそっと外させて、バッツを起こさないようにとなるべく静かに布団から這い出たところで、控えめに部屋の扉が開けられた。
「レオン、起きてたのか」
開いた扉の隙間から細く差し込む廊下の明かりの中、父親がそう声をかけてきた。
「とうさん、」
「生まれたぞ。弟だ」
眠るバッツを気遣ってひそめられた声には嬉しさだけがにじんでいて、レオンは母親も弟も元気なのだと安堵して、そして喜んだ。
「バッツが起きたら病院に行こうな」
「うん」
今日は良い日だ、と父親は微笑んでレオンの頭をくしゃりとなでた。
「今日はあのこが生まれて―――そしてお前の誕生日だからな」
病院に行ってみんなでお祝いしよう。
父親の言葉が嬉しくて、レオンもまた父親に笑い返した。
「みんなでのお祝い」は、スコールの二度目の誕生日を待たずに母親が亡くなったために、結局その年しか出来なかったけれど。
父親も今年の5月に逝ってしまった。
それでも家族全員で自分と弟の誕生日を祝ったあの日の事は、レオンは今でも鮮明に覚えているし、大切にしている思い出だった。
あの日、確かにあそこにいたのは家族だったのだ。
いつから自分だけがこうなってしまったのだろう。
「レオン、ただいま~!」
早朝から元気の良い声が聞こえてきて、レオンは起きぬけのまま廊下に出た。
玄関に着くとバッツがスニーカーを脱いでいるところだった。スコールの姿は無い。
今年もラジオ体操の完遂は無理だったか、と未だ二階で寝ているだろう弟を思い苦笑していると、靴を脱ぎ終えるなりバッツが飛びついてきた。
突然の襲撃を慌てて自分の腕に受け止めてやると、走って帰ってきたのか息を切らせているバッツがぎゅうっと抱きついてくる。
「……どうしたんだ」
跳ねる鼓動を内心に押し留めて普段どおりの顔で訊ねると、バッツは途端に表情をほころばせた。
「誕生日おめでとう!」
一番に言いたかったから急いで帰ってきたんだ、と言って笑うバッツに思わずこちらの表情もゆるむのを感じる。
「ありがとう、バッツ」
柔らかな薄茶の髪をなでると、一番だった?と上目遣いに訊ねられる。
「ああ、お前が一番だ」
「そっか、良かった!」
えへへ、と満足げに笑うバッツの表情はまだまだ子供で、来年中学に上がるとはとても思えない。
(そうだ。まだまだ子供だ)
「プレゼントもちゃんとあるんだ!それから……」
「バッツ、あまりさわぐとスコールが起きるぞ」
「……もう起きた…………」
寝ぼけ眼をこすりながら、不満そうな声を上げつつスコールは階段を下りてきた。
「あ、スコール!」
するり、と。
抱きとめていた腕から抜け出していったバッツは、レオンにしていたのと同じようにスコールに抱きついた。
「スコールも!誕生日おめでとう~」
ぎゅっと抱き締められたスコールは「『も』ってなんだよ」と文句を言いながらも、耳の端を赤く染めて照れていた。
「ごめんごめん、ケーキはちゃんとスコールの好きなのにするからさ。何が良い?」
「…………じゃあ、チョコのやつ」
「よし、まかせろ!」
いい子いい子と頭をなでられるスコールが、子供扱いするなよと口では言いながらも、バッツの手の下で嬉しそうに目を細めているのがレオンにははっきり見えていた。
三人きりの家族になってしまった今、兄弟仲が良いのは何よりのことだ。
だからスコールが幼い頃と変わらずバッツに懐いている事にだって、微笑ましいと思いこそすれ、こんな気持ちを抱く必要なんて何処にも無い。
……いつからこんな事を自分に言い聞かせるようになったのか。
自嘲気味な笑みと共にレオンはそっと息をつき、じゃれあう二人に向き合った。
「朝食にするぞ。スコールは顔を洗って来い」
一声かけて台所に入ったところで、洗面所に向かったスコールから離れたバッツが追いついてきた。
「レオンは晩ご飯何が良い?」
「晩ご飯?あいつの好物でいいんじゃないか?」
「それじゃ駄目だって!ケーキは甘いの好きなスコールに合わせたから、料理はレオンが好きなのにしたいんだ。何でも言ってよ」
頑張って作るから。
その一言に簡単に浮上する心。
(ああ、どうしようもないな……)
バッツもスコールもまだほんの子供で。自分だってたかだか17のガキに過ぎなくて。
何より、自分達は三人きりの大切な家族なのに。
些細な事で弟に嫉妬してしまう程、自分は妹に執着している。
有り得ない筈の思いを抱えている。
何度も自問自答しては否定した。否定し続けた。
だがそれも、もういい加減限界なのかもしれない。
どろりと澱のように自分の底にたまった思いは、目を背けたくなるほど暗く汚い。
「レオン?」
そっと触れてきた指に、レオンはわずかに目を見開いた。
目線を下げるとバッツがこちらを気遣うように見上げてきていた。知らず眉根を寄せていたらしい。
「大丈夫か?」
「……ああ、別に何でもない」
「そっか……?なんか、苦しそうだったから」
「…………大丈夫だ」
(大丈夫。―――――まだ、大丈夫だ)
笑いかけてやると、よかった、と言ってバッツがほっと息をつく。
灰茶色の目が正面からレオンを見つめる。
「無理したらいやだからな。レオンはおれのだいじな、おにいちゃんなんだから」
向けられるのは、純粋な好意。
レオンはバッツの頭を撫でると、その体を引き寄せ抱き締めた。
「ありがとう、バッツ」
ほんの一瞬だけ腕に包み込んだ体をすぐに離し、微笑みかける。
「―――お前がいてくれるから、俺は大丈夫だ」
たとえ暗く汚い泥の底に沈んでいても、おまえの真っ直ぐできれいな心が俺を引き上げてくれるから。
俺はまだ、あるべき処へ戻ってこられる。
いつもと変わらぬやさしさでほころんだバッツの笑顔を、花が咲くようだと思いながらレオンはゆっくりと目をそらした。
「さあ、朝食にしよう」
いつもと変わらぬ日常に戻るために。
17歳の、夏の事だった。
***
この時点ではまだまだバッツもスコールも純粋な家族愛です。
レオンだけが恋愛感情を持ってしまってる段階。
ちなみに三兄弟の両親はラグナ夫妻かドルガン夫妻かはたまた全然別の人達か、というのは特に考えてません。
読まれた時の印象でお好きな両親像を想定したりしなかったり、ご自由にお願いします。笑
PR